結論からお伝えします。
絶対にやってはいけない事、それは【嘘をつく事】です。
当たり前の事ですが、得てして当たり前の事をするのは難しいのです。
仕事柄、色んな新素材に触れる機会があります。
それこそSiCや、窒化ガリウム、アルミナ、窒化アルミ…
見たことも触れた事も聞いた事もないような不思議な素材達です。
加工テストを行う際にはそんな新素材達を含め、イメージを膨らませます。
この荷重でダイヤが刺さって…こう切れるはずだから…
回転は上げ過ぎない方がよさそうだな…
SiCと近い感じがするから…砥粒径はこれぐらいにしておくかな…
ネバ硬い系っていうよりはカタ脆い系だから…といった感じです。
そうなると想定加工レートこれぐらい、平行度、平面度も出そう、
面粗度もこれぐらいであろう…と仮説を立てます。
また、実際に加工を初めてからも、この加工音は切削している音だ、
このワークの回転の仕方はしっかりダイヤが刺さっているから
抵抗が生まれて回転しているんだ…等、
さらに加工中も情報を収集します。
この時、無意識に【自分の仮説が正しい】に【繋がる結びつけ】をしがちなのです。
ニュース等と一緒ですね、無意識に自分の正しいと思う(思いたい)情報を収集してしまう、
自分の選択は間違ってないと思いたい心理です。
その【仮説が正しいと思い込む為の結びつけ】をするが故に、
仮説と違う時が厳しいのです。
お客さんに「加工出来ますよ」と伝えていたらもう焦りしかありません。
その時に自分との闘いが始まります。
闘いは2つ。
・想像と違う結果になったことを素直に受け入れ、別の原因を探す。
・想像と違う結果に納得出来ず(感情が入る)、仮説は正しいはず!
前者ですと自分の考えを否定(一旦捨てる)+テストの切り口を変えなければならないので、
仕切り直しです。
再度考え直すのでパワーも時間もかかり、納得する結果がでるかもわかりません。
ですが、新しいことに気付けたりゴールへの方向性が見えたり次へのヒントになります。
出来る出来ないも明確になります。データとして後々生きるので決して無駄にはなりません。
お客様にはなんだよ!出来ないのかよ!と怒られるかもしれませんが…。
後者では自分が正しいと思っているので、自分が正しいという情報を集めがちになります。
その為アクションは行いやすく、追加テストもしやすいのですが、
【データに忖度】が入りがちです。
仮説が違った事を認めたくないが故に、0だったものを0.1にしたりと
自分の仮説に少しでも近づけたくなるのです。
自然とマイクロゲージに力が入るのです。
面粗度計の数値も自分の仮説と近い値を無意識に探してしまうのです。
ダメだったけど仮説は近かった、自分は完全に間違えた訳ではない、
ちょっと違っただけだ…と自分への落とし所を作るのです。
その気持ちもわかるのですが、【データに嘘、ごまかし】が入るとを全てが狂います。
0じゃないなら追う価値はあるかもしれない、
多少なりともダイヤが刺さってるなら粒径の問題かもしれない…、
もう一度やり直してみよう、この延長線上で考えてみよう等、
少しの嘘でその後の方向が狂ってしまう事が多々あります。
感情が入った結果、都合よくデータを修正し、何も原因が究明できないパターンです。
残るのは「原因不明」になります。自分にもお客様にもメリットがありません。
時には自分の考えを追い続ける事も大事ですが、時と場合によるのではないかと思います。
データは正直でなければいけません。