【1次研磨工程で不織布パッドを!】
1次研磨工程などで使用される研磨パッドは発泡ポリウレタンのみからなる通称ウレタンパッドが主流ですが、それとは別に不織布系研磨パッド(以下、不織布パッド)を使用するケースがあります。
不織布と呼ばれる短繊維を樹脂で固めて作られた研磨布のことを指し、一般的な色味としては白いものが多いかと思います。
不織布パッドは、樹脂オンリーではないため研磨レートはウレタンパッドよりも出にくいですが、面精度の良さと扱いやすさにおいて利点があります。
不織布パッドは、樹脂よりも柔らかい短繊維のおかげで基板の表面粗さ(Ra、Rmsなど)がウレタンパッドよりも値が小さい(良くなる)傾向がでます。また、平坦度を出す場合もウレタンパッドよりも作業者の経験値に関わらず出しやすい傾向があります。
次に研磨熱という観点から考察してみます。
研磨を実施すると当然ウレタンパッドでも不織布パッドでも研磨熱は発生します。
ウレタンパッドの場合、研磨熱を与えられ柔らかくなった樹脂は基板の端にいくほど偏圧で沈みやすくなり研磨レートが基板内において上がりますがその結果、外ダレが生じると考えられます。一方、不織布パッドはその熱がどこにたまる(伝わる)のかを考えると、不織布パッドは、不織布の短繊維と、固めている樹脂の両者になるので、樹脂だけのウレタンパッドの場合は熱ダレしますが、不織布の短繊維が入ることにより繊維と樹脂の無数に存在する境界面、および繊維の持つ空隙における放熱によって、研磨布の熱ダレがしにくい状況をつくりやすくなります。となると、研磨布の形状が転写されてくる基板も、平坦度の良いものが得られる、ということが言えます。
また、一般的に考えて平坦度だけを追い求めれば、研磨パッドは硬い方が良いですが、その場合は表面へのキズが入りやすい状況になるため、ある種のトレードオフの関係があることは考慮しなければなりません。
さらに、研磨レートを得るための一つの考え方として、研磨布のスラリーの抱え込み、という切り口で考えるとどうなるでしょうか?使用する砥材の種類、粒子径にもよりますが、不織布系研磨パッドは、短繊維にもスラリ-が浸潤するため、スラリーを抱え込みやすくなります。研磨の場において、砥材に仕事をさせるためには、抱え込んだスラリーを効率よく吐き出してもらう必要がありますが、そのときに不織布と樹脂の比率、どんな樹脂を使っているか、によっても大きく変化します。柔らかければ、短繊維が多いからスラリーを多く抱え込んでいるから、効率よく吐き出して研磨レートが向上するか、と言われればそういうこともなく、吐き出したスラリーをそのあと、どれくらいの硬さの研磨布で加圧して研磨していくか、ということも重要になるため、そこは状況にあわせて研磨布を選択する必要があります。
しかし、不織布パッドである限り、そこまで大きく研磨レートが変化することはなく、研磨後の面の状態といった観点では上述のように、面状態を高精度に作りこみやすいため、2次研磨が必要ない場合もあります。となると、研磨レートだけで見るのではなく、プロセス全体としてみれば、1次研磨工程ではむしろ不織布パッドを使用することが近道となる加工もあると推察されます。一度お試しを!